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するケースなどがあり、これら自社のポジショニング、あるいは経営戦略に伴い、取得にかかる判断は大きく影響を受ける傾向にある。
以上のように、外部環境とそれに応じた自社のポジショニング、経営における内部的な要因など、複雑な判断材料が総合的に評価される。その上で、自社における作業船取得の必要性が判断され、その後に取得にかかる判断が下される。作業船は必要だが、取得(保有)までには及ばないと判断される場合には、リースあるいはレンタルによる代用が行われるが、ヒアリングでは北海道の海洋土木業界の特色として、同業者間で作業船を融通し合い、貸借を行うことが多いことも判明した。また逆に、自社自身による使用を二次的に考え、チャーター船として利用するために作業船を取得する海洋土木事業者も存在し、投資決定には多様な要因が存在していることが考えられる。
【2】情報収集
取得を検討中の業者は、起重機船にかかる具体的な情報収集を行うわけであるが、その基本的なスタンスとしては、上もの(クレーン)を重視した情報の収集が図られる。
接触するチャネルとしては、クレーン重視の基本姿勢からも、保有船のクレーンメンテナンスによる繋がりのあるクレーンメーカー代理店などにコンタクトすることが多い。また逆に、クレーンメーカー代理店の海洋土木事業者に対する営業攻勢も激しく、それら代理店からの情報は、具体的な投資内容の決定に関する有効な情報源となっている。
また、同時進行的に台船部を建造する造船所の物色並びに情報収集も行われることが多い。その対象となるのは、既存の取引がある先(既往保有船の評価による)や、同業者保有船の情報、修繕発注等の繋がりがある先や相見積もり先など、情報源は複数存在している。
また、新造船でなく、中古の作業船でも十分であると判断される場合等においては、中古船市場も物色されることになる。中古船物色に際しては、商社経由での情報入手か図られることが多いが、造船業者の中にもそうした中古船市場に通ずるコネクシヨンを持ち、顧客のニーズに応えられる体制をとっている社もある。
【3】発注にこかかる具体的検討
以上のような情報収集過程を経て、具体的な発注が決定されることになる。その際の重要な決定内容としては、発注タイミング(時期)と発注先があげられる。
まず、発注のタイミングとしては、年度当初からの稼働に問に合うようなデリバリーが要求されることが多い。その背景として、北海道の海洋土木工事においては、その海象条件等により稼働期間が短いため、年初(ヒアリング結果では、5月初旬から中旬)からの稼働が求められることと、それに伴い、当該作業船による工事実施を前提に入札に参加しているなどの、工事受注上の問題があるためである。
また、ヒアリング等からうかがえた注視すべき動向として、発注時期が遅延化しつつあることがあげられる。上でも述べたように、従来から北海道では海象条件等に制約され、公共工事の稼働期間が短いことから、工事稼働のオフシーズン中に次年度以降の作業船の新造可否を検討し、次年度工事に間に合わせるための作業船建造を行うことが一般的であった。加えて、最近の傾向として、海洋土木事業者としては、今後についての不透明感から、発注のタイミング

 

 

 

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